幕末オオカミ


現場は、旅籠街の端だった。


「息のある者には、縄をかけろ!」



沖田の声がして、物陰から少しだけ顔を出す。


斬り合いは、もうほとんど終わっていた。


隊士が、まだ生きている浪士に縄をかけていた。


良かった……すぐおさまったんだ。


負傷した隊士もいなさそうだし……


ホッと息をついた途端。


頭上から、殺気を感じた。



「!!」


そちらを見上げる。


一人の浪士が、屋根の上で、短刀を構えていた。


おそらく、斬り合いの間、旅籠に隠れていたんだろう。


その目が、まっすぐににらんでいるのは……



「沖田……!!」


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