幕末オオカミ


あたしは思わず、叫んでしまった。


それに気づいた沖田が、ハッと屋根の上を見る。


「くっ……」


不意打ちを狙っていた浪士は、沖田に正面から向かっては勝てないと思ったのか、屋根の向こう側に駆け出した。


そのまま、あたしがさっき通ってきた、河川敷に飛び降りる。


追いかけなきゃ!


すぐに駆け出そうとしたあたしの肩に、何者かの手が置かれた。



「待て」


「沖田……!」


「俺が行く」


肩に置いた手は、あたしをさらに陰に隠し、顔だけを隊士たちの方に向けた。


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