HANABI
あの人はいつもメニューを持って来て注文をとる。
それ以外は、運んでくるのもレジも、いつも違う店員さん。
ただ今日いつもと違ったのは、あたし以外にお客さんがいないこと。
いつもホールには3、4人くらい店員さんがいるのに、あの人とおばさんの2人しかいないこと。
あたしがメニューを開くと、
「最近、よく来てくださいますね。」
「えっ?」
いきなりあの人から話しかけられた。
「いや、よく来てもらうから覚えちゃいました。いつもこの席に座られて、カプチーノ飲まれますよね。」
「えっ、あ、はい。」
「本当にいつもありがとうございます。」
「いいえ、そんなとんでもない!」
あたしはその人の顔を見ると、うまくしゃべれなかった。
せっかくのチャンスなのに。