プレシャス･ラブ ♪

家に着くと、玄関には男の人の大きな黒い靴。

こんな時間に、お父さんが帰ってるはず無いよね？


「ただいまぁ。」


私は、玄関で靴を脱ぎ家に入ると、お母さんが態々出迎えてくれた。


「待ってたのよ。ｽﾐﾚ、お帰り。」

いつもなら、リビングから「おかえり～」と声が響くはずなのに…。

今日は、何かがオカシイ…。


いつもなら、着替えをしてリビングに行くのに、今日は制服のままお母さんの後を追う。


「では、先生。よろしくお願いします。」




　へ………？？？　

　先生………？？？


「家庭教師をお願いしたから、井原ﾕﾀﾔ先生よ。とっても優秀なの。早く部屋に案内してあげて。」

「聞いてないよ！」

強気で言った私の言葉に、


「言ってないもの。」

と、淡々と笑顔で答える母。


「じゃぁ。私は、買い物に行くので、宜しくお願いしますね。」

お母さんは軽く先生に笑顔を向けながら頭を下げると、買い物に出掛けた。



私は、仕方なく渋々自分の部屋に案内した。


母親には勝てない。


自分の部屋で、決着つけるしかないな。