【短編小話】失 恋
「もう行かなきゃ。」

一瞬智君の顔が曇って、瞳の奥が暗く沈んだ。

あたしの声が揺れる。

馬鹿だよ。

今更何が変わる訳でもないのに。

あたしたちの想いはもうクロスしない。

今迄平気だったじゃない。

悲しくても、辛くても、今にも手を伸ばして仕舞いそうな焦がれる想いも、ずっとずっと蓋をして。

景色が滲んだ。

「ッは、煙りが目にッ・・」

笑った瞬間、あたしは強い力で引き寄せられた。

「智ッ?!」

「ゴメン。」

息が出来ない。

白いタキシードに包まれた碧いドレス。

あたしに似合うのはこんな色のブーケかもしれないな。

抱きしめられながら、そんなことを考えた。
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