【短編小話】失 恋
遠くで沸く拍手と歓声。

あたしは多分人生最後になる煙草を燻らしていた。

本当は煙草は嫌い。

優しく叱るのが聞きたかった、ただそれだけ。

「俺さぁ、比奈好きだったんだよね、昔。」

背中に隆平の声。

「まっ、見事に玉砕したけどな。」

何も応えないあたしに構わず続ける。

「そーやって押し殺すから膿んじまうんだからな。泣け、泣いちまえ。」

バサリと上着が頭に掛かった。

「馬鹿、危ないじゃん、火ぃツイてるのに。」

「ハイハイ。」

「知らないからね、汚れても。涙だけじゃなくて、鼻水とかいっぱい!」

「往生際悪ぃな!いーからもう。」

うるさいな、とっくに泣いてるよ。

隆平の、お節介。

馬鹿。

・・・ありがとう。
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