情炎の焔~危険な戦国軍師~
「細川屋敷の事件は当然知っているな?」


三成様が切り出す。


私は旅の服装から侍女の服装に着替え、話し合いが行われている広間の隣室にいた。


左近様もこの部屋で控えている。


「ああ」


「知っている」


2人の奉行が口々に言う。


「ならば話は早い。人質作戦はやめだ」


「「何!?」」


奉行達は三成様の言葉に驚いたようだ。


「このまま続けていたらガラシャ殿のような選択をする者も出て来よう。そうなれば敵の怒りをますます煽るだけだ」


「今さらか?」


長盛様が驚く。


「何かあってからでは遅い」


大坂に来る前に、私が諸侯の妻子を人質にするのはいくらなんでもかわいそうだと言ったら色々言っていた三成様が、今度は人質作戦をやめようと訴えている。


よほどガラシャ様の事件に驚いたのだろう。


横を見ると、左近様が苦い顔をしていた。


「左近様?」


「俺からすれば人質作戦は有りだと思います。だが、こうもあっさりやめるのはどうかと思いましてね」


「そうですか?」


よくわからないので聞き返す。


「敵に見透かされるような気がして。いざという時の西軍の中枢の脆さを」


「…」


「だが、そのくらいで意見を曲げる殿ではない」


やりきれない気持ちで私はぐっと拳を握った。
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