情炎の焔~危険な戦国軍師~
一方、数日後の徳川軍。


「密使がこちらに次々と来ている」


家康は控えている忍、服部半蔵に言った。


「そのようですね。もはや西軍は統一が取れていない」


半蔵はほくそ笑む。


「元忠」


家康もニヤリとしながら、やはり控えていた鳥居元忠を呼んだ。


「はっ」


その時には家康はすでに真剣な顔になっている。


「わしは会津の上杉を討ちに行く。その間、そなたに伏見城を任せる」


と、言っても軍の大半は会津へ行ってしまうため、伏見に残るのはわずかな人数である。


しかし、三成は何万もの大軍を引き連れて来るのだ。


つまり伏見城は捨て城、それどころか元忠の命が失われる可能性も当然高い。


元忠ももちろんそれはわかっている。


わかっていながらこう言った。


「承知つかまつりました」


「礼を言う」


「この命、殿のためなら惜しくはありませぬ」


穏やかに笑う元忠を見て家康の心は痛んだ。


(すまぬ、元忠…)


元忠が退室してから家康は半蔵に話しかけた。


「狐と狸の勝負、我々の勝ちだな」


「はい。ゆいという歴戦の勇士もいることですしね」


「そうだ。ゆいといえば友衣とかいう三成のところにいる女子の動向は?」


「三成と共に大坂にいるようです。いまだ徳川に寝返る様子はありません」


「そうか。まあ戦になれば自ずとわかるだろう」


家康も半蔵も徳川の世が来ることを確信するのであった。
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