情炎の焔~危険な戦国軍師~
「これでは埒(らち)が明きません」


左近様が三成様にため息まじりに言う。


私達は一度佐和山城に戻り、美濃を攻める準備をしていた。


「なんと、10日も銃撃戦をしていてまだ落とせないのか」


使いの者から報告を聞いた三成様は呆れ返っている。


それもそのはずだ。


約1800人がこもっている城を、およそ4万の兵が包囲して10日経っても落とせないなんて、現代人の私でもおかしいと思う。


「殿、明日は伏見へ行って下さい」


左近様が言った。


「だが、美濃はどうするのだ。あそこの城を手に入れられれば最前線の基地に出来る」


私は三成様達の邪魔をしないように黙って聞いていた。


「美濃へ向かう軍は俺が指揮をします」


おおっ、かっこいい。


きっぱり言い切った左近様に思わず拍手したくなる。


彼の力強い言葉に三成様は小さく微笑んだ。


「そうか。では、美濃はお前に任せよう。オレは明日、騎馬隊を連れて伏見に行く。友衣」


三成様の目がこちらに向けられる。


「お前も来い。伏見城がお前の初舞台だ」


「はい」


緊張を隠して私はしっかり返事をした。
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