情炎の焔~危険な戦国軍師~
「はあ…」


部屋に戻り、私は深いため息をついた。


緊張が半端ではない。


手には嫌な汗をかいている。


「友衣さん」


その声を聞いて障子を開けると左近様がいた。


とりあえず中へ招じる。


「こんな夜更けにどうしました?」


するとこんな返事が返ってくる。


「明日、伏見に行けと言われたでしょう?怖がって泣いてるんじゃないかと思って」


「なっ、なんちゅう妄想してるんですか」


さすがに泣いてはいないが、確かに怖いと思っている。


刀や槍や矢や馬や屈強な兵士と戦わねばならないのだから。


「私は三成様や左近様を守るために戦うと決意したんです。そのためにここにいさせてもらってるんです」


そう言うと、左近様の口元がほころぶ。


「それは心強い。…と言いたいところだが」


「だが?」


「あんまり気負っちゃいけませんよ」


「気負ってなんか」


「友衣さん」


真剣な視線が私を射抜く。


「こんなに手が震えてるじゃないですか」


温かくて大きな手がぎゅっと私の手を包む。


慈しむような優しい目に見つめられ、私はつい本心を話し始めた。
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