情炎の焔~危険な戦国軍師~
「正直に言えば、確かに怖いです。戦なんて初めてですから」


「はい」


左近様は頷いて話を聞いてくれる。


「三成様や左近様を守りたいというのは本当です。でもやっぱり不安なんです」


「ええ」


「ちゃんと役に立てるのか、失敗しそうで怖い。傷を負うのが怖い。大切な人々を失いそうで怖い。情けないですよね」


自嘲するが、左近様は優しく笑ったままだ。


「それが人間として当たり前の感情です。みんなそんな不安を抱えながら戦ってるんですよ」


「左近様もですか?」


「もちろん。怖いのはみんな一緒ですよ」


「それならどうして」


半蔵さんの時だってそうだし、奇襲だって自ら出向いた。


怖いと思っていたら、なかなか出来ることじゃない。


「言ったでしょう?人は守りたいものがあれば強くなれるって。殿のことを、そしてあんたのことを考えるから勇気が出てくる」


繋がれた手に力が入る。


「だから俺は戦えるんです」


その微笑みを見て、心の中のもやもやがスーッと消えていく気がした。


「あの、話を聞いて下さりありがとうございました」


「もう大丈夫ですか?」


「本当はまだ不安です。でも左近様には負けられません。私にだって大切な人が、守りたい人がいますから」


「その意気です」


満足そうに頷き、左近様は立ち上がる。


「もう行くんですか?」


つい、言ってしまった。
< 111 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop