情炎の焔~危険な戦国軍師~
「ん?」


左近様は不思議そうに目をぱちくりさせている。


「あ、いや…」


自分でも何言ってるんだろう、と思った。


「1人じゃ不安で眠れませんか?」


「そんな。子供じゃあるまいし」


「なら添い寝しましょうか」


「間に合ってます!」


「おや?間に合うって言ったって誰がいるんです?」


そう言う顔がニヤけている。


うう、完全に遊ばれている気がする。


「私には…えっと、あの左…」


その直後、恥ずかしさでパニックになった。


「うああ、なんでもないです。何も言ってないです。おやすみなさいっ」


そしてあらかじめ敷いておいた布団に勢いよく潜り込む。


「やれやれ。子守歌でも歌いましょうか?」


苦笑する声が頭上から降ってきた。


「いりません!」


私は布団から目だけ出して答えた。


「そうですか。そりゃ残念だ。じゃ、おやすみなさい」


「おやすみなさい」


障子が静かに閉められる音を聞いても、まだ恥ずかしさでいっぱいであった。


「まったく。面白い人だ」


一方の彼はそう笑いながら呟いたのを、私は知らなかった。
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