情炎の焔~危険な戦国軍師~
自分でも耳を疑うほど間抜けな声が出た。


「第一、いきなりどこの馬の骨ともわからぬ女をただ単に居候させるとなれば城の皆が怪しむ」


「側室と思われるかもしれませんよ?そしたらきゃー、どうしよ♪」


完全な悪ふざけで言ってみたが


「バカ」


と一睨みされてしまった。


「っていうかどこの馬の骨かわからないって言ったって、私は未来から来たんですよ?どこそこの地方にあるどこの家の者だって証明出来るわけないです」


だってこの世界では誰も私を知らないのだから。


「お前が未来から来たというのはオレ達2人は知っている。だが、バカ正直に城の者みんなに「こいつは400年後から来たのだ」と説明するのはどうかと思うが」


「そうですか?」


「信じてくれずに不審に思う奴がいるかもしれない。仮に信じてくれたとしても、好奇の目にさらされると、お前も何かとやりにくいだろう?」


三成様の言葉にハッとする。


「もしかして私を心配してくれた上で?」


「とにかくそういうわけで、お前には侍女として働いてもらう」


あ、体で払うってのは肉体労働ってことね。


やだ、私ったら。


「新しい侍女を雇ったという形でお前を迎え入れれば、誰も怪しまないだろう?」


三成様ってなんだかんだ言って優しいんだ。


ゲームの時もさりげない優しさを見せてくれたが、ここまでではない。


「ありがたき幸せ。この各務、三成様のために力の限りお仕事させて頂きたく存じまする」


ちょっと大河ドラマのセリフを意識して言ってみたら、三成様の口元がまたわずかに緩んだ。


左近様はあからさまにくすくすとおかしそうに笑っている。


「お前、時々面白いのだな」


女性みたいに口元を扇で隠しながら言う三成様。


「本当に変わった娘さんですな」


興味深そうに私を見る左近様。


どうやら私のテンションで真面目なことを言うとおかしく聞こえるらしい。


「あはは…」


2人の視線を浴びて照れてしまったので、とりあえず笑ってごまかした。


「蟄居の間のいい暇つぶしになりそうだな」


三成様の言葉に私の中で戦慄が走った。
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