情炎の焔~危険な戦国軍師~
気付くと朝だった。


「おはようございます」


目の前にはさらっと挨拶をする左近様の顔。


「お、おはようございます…」


2人とも同じ布団の中で一糸まとわぬ状況なので、恥ずかしいことこの上ない。


思わず顔をそむけてしまう。


「こっち向いて下さいよ」


私の心中を知っているのか、クスッと笑って左近様が言う。


「嫌です」


「ゆうべはあんなに可愛い顔を見せてくれたのに」


その言葉を聞いて昨夜の秘め事を思い出し、火が出るかと思うほど全身が熱くなった。


「もうっ、左近様ったら」


私は思わず振り向いて言う。


「ああ、怒った顔も可愛いですね」


ニヤニヤしているところを見ると、どうやら完全にからかっているようだ。


「そんなこと言って。恥ずかしすぎて死んだらどうしてくれるんですか」


「羞恥のあまり死ぬなんて聞いたことありませんよ」


あ、またさらっと言われた。


「…」


私は何も言えなくなってむうっとした。


すると、ふっと笑う声がしたと思うと頭を愛おしむように優しく撫でられる。


髪を通して感じる手の温もりが私の心をじんわり溶かした。


「俺、本気ですから」


「本気?」


「あんたを離したくないって言ったこと」


「左近様…」


先程とはうってかわって真剣になった顔から、視線をいたずらに逸らすことは出来なかった。
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