情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド左近-


ひなたさんが去り、友衣さんも戻っていった。


ため息をつきながらまだ彼女の体温の残る褥に1人で横たわると、淡い香りが鼻をくすぐる。


友衣さんの、見たことのない顔。


聞いたことのない声。


全部、はっきりと思い出される。


1つ1つ蘇る、昨日の俺の腕の中にいた友衣さんの記憶。


胸が切なくしめつけられる。


狂おしいほどに愛しい。


もうすぐ戦が始まるだろう。


たとえその戦までの命だとしても、武士としての志を貫ければ構わない。


最近までの俺だったらそう思っていた。


だが、今は違う。


生きたい。


生きて大切な人を守り、そばにいたい。


俺は布団から出て小袖を身にまとい、立ち上がる。


それと共にふわりと舞い上がった彼女の香りの残滓(ざんし)が俺の心を再び掻き乱した。
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