情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド三成-


「一度こうしてお前と話をしたかった。この城を出た後はそんな暇もないかもしれないからな」


部屋に入るなりいきなり友衣にそう言った。


「私とですか?」


「ああ。お前は未来からやって来たからな」


それは口実に近かった。


未来から来たから話がしたいのは嘘ではない。


ただ、彼女自身にも興味があった。


心が強くないのに、たまに意見してきて、口答えしてくる。


生意気だと思うはずなのになぜか憎めない奴。


女に関心を持つのは華以来だ。


全く謎の女だ、友衣は。


「未来…」


何も知らない友衣の表情に緊張が走る。


「オレの運命も知っているのではないかと思ってな」


「えっと」


彼女は言おうか言うまいか迷っているようだった。


「おおよそは…」


おそるおそるそれだけ言っている。


「ちゃんと、どんな運命だとしても聞いてくれますか?」


「ああ。言ってみろ」


促すと決意したように口を開いた。


「三成様はこれから…っ」


その後はなぜか魚のように口をぱくぱくさせた。


「あれ、声がまた出ない?」


独り言を言ってから


「あのですね、三成様はこれから…」


また口をぱくつかせた。


「ごめんなさい。私、肝心な所で声が出なくなるんです」


よく分からないが、真面目に言っているのはその少し悲しげな顔で分かる。


だが、そんな顔は見たくないので話題を変えることにした。


「まあ良い。ところで左近とは上手くやってるのか?」


すると友衣は桜色に頬を染めながら優しい微笑みを浮かべて答えた。


それは今までとは比べ物にならないくらいに、女の顔をしていた。


「そうですね」


「まあ、左近のことはオレも信頼しているから心配はしていないがな。頼り甲斐のある男だと思っている」


「はい。左近様、優しくていつも助けてくれますから」


何だ。


この胸の奥のほっとするような、逆に痛いようなおかしな気持ちは。


分からない。


その後も夜が更けるまであらゆる話を続けたが、その気持ちが消えることはなかった。
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