情炎の焔~危険な戦国軍師~
「友衣は口を出すな」


厳しく言われたって、負けない。


「そりゃ一侍女兼兵士じゃ説得力もないでしょう。それに私は三成様や左近様みたいに頭がいいわけじゃない。だけどこれだけは言えます」


キッと三成様を見すえて言い放つ。


「あなたは楽観的すぎます。予想外のことが起きた時にも備えて様々な手を打っておくべきです」


考え直してほしかった。


三成様は油断しすぎている。


裏切りにしても、家康殿のことにしても、万が一、ということをまるで考えていない。


全部、自分の頭の中で描いたシナリオ通りに事態が動くと思っている。


でも、それは違うと気付いてほしい。


どうかわかってほしい。


あなたを死なせたくない。


しかし、その思いは届かなかった。


「貴様、いつからそんな偉そうな口をきくようになった」


三成様の口から出たのは繊細な彼に似つかわしくない、ドスのきいた声。


「!」


恐怖のあまり、背筋が凍る。


「貴様はバカの分際でいちいち出しゃばる。目障りなのだよ」


そう言い捨てて、三成様は不機嫌さをあらわにしながら隣室へ姿を消してしまった。


「三成様を死なせたくないだけなのに。なのになぜ、わかってくれないんですか…」


泣きたくなる。


すると左近様が悲しげな顔で肩を叩いてきた。


「殿は少しぴりぴりしているだけです。だからあんな言葉遣いをしてしまったんでしょう。あんたは間違ってない」


三成様の態度がショックすぎて、今はその言葉さえもつらかった。
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