情炎の焔~危険な戦国軍師~
「友衣さんって言いましたね」


いきなり左近様が話しかけてきた。


「はい」


「そういえばあの女もゆいと名乗っていたな」


三成様はハッとした顔になる。


「あの女?誰ですか?」


話が見えないのでそう聞くと左近様が答えてくれた。


「いや、天下がまだ統一されていなかった頃、九州の戦いや忍城の戦いでひときわ成果を上げたゆいっていう女武者がいましてね。彼女は元々秀吉殿、その後は殿に仕えていたんです」


女武者かあ。


なんかかっこいいな。


「ところが、だ」


口を挟んだ三成様は難しい顔になっている。


「最近まったく顔を見せないのだ。あいつを見たという話もないし、まるで霧のように消えてしまった」


それを聞いて何となく嫌な予感がした私はおそるおそる聞いてみた。


「まさか…家康殿のところに行っちゃったとか?」


「まあ、あいつほどの勇士なら家康だって味方にしたがるだろうからありえない話ではないな」


三成様は表情ひとつ変えない。


「そんな。どうして?」


「さあな」


三成様はフイと私から視線を逸らした。


左近様も俯いている。


「…私が力になります」


「え?」


「何?」


左近様と三成様が一斉に驚いたような顔をこちらに向けてきた。


「戦の時はそのゆいさんって人の代わりに私が戦います」


「バカ言え。こんなひ弱い体のお前が戦えるか」


キッと睨んでくる三成様の視線が痛い。


「私だって何か力になれるはずです。1人より2人、2人より3人でしょ?」


「いくら3人でも弱い奴は足手まといにしかならん」


三成様はキツい言葉を浴びせてくる。


が、手元の扇をせわしなく開け閉めしているのはなんか怪しい。
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