情炎の焔~危険な戦国軍師~
「そうですよ。三成様は勝たなきゃいけないんです。絶対に」


気持ちが通じたんだ、と喜びたくなった。


しかし。


「その気持ちはありがたい。だが小競り合いで勝っても意味がない」


三成様の口から出たのは私の期待を裏切る言葉。


「なぜそう思うんですか?たとえ小競り合いでも、敵の兵力を削ることは出来るんですからいいじゃないですか」


「この戦の目的は家康の首だ。よってこの周辺の敵を蹴散らしたところで無駄なのだよ」


「そんな…」


あくまでもそれこそこれから起きる関ヶ原の戦いのような、大戦を望んでいるということか。


「でもここで下手に慎重になってて、いきなり敵に攻めて来られたらひとたまりもないでしょう。そうなったら元も子もないですよ。家康殿の首云々言う前にやられてしまいます」


なんとか食い下がる。


「先程、左近にも言った。オレにはオレの考えがあるから少し待ってほしい、とな」


それ以上は、もう言えなかった。


「…すまぬな。左近、友衣」


その言葉を残し、三成様はあの時みたいに隣の部屋に消えてしまった。
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