情炎の焔~危険な戦国軍師~
三成様の危機感を煽ることに失敗した私は、彼の言った「オレの考え」というものに期待するしかなかった。


しかしここ数日間、私や左近様が何を言ってもはぐらかされてしまう。


そんな折、左近様は夜襲作戦を持ち掛けた。


「夜襲だと!?」


三成様が驚いた声を出した。


「ええ。敵は美濃赤坂辺りまで来ているようですが、兵は依然として疲れきっているようです。今が好機ではないですか」


「夜襲なぞ」


三成様が言ったその時。


「入る」


若々しいその声と共に、西軍の将の1人である宇喜多秀家様がやって来た。


「三成殿。折り入って相談したいことが」


「なんでしょう」


「夜襲をかけたいと思うのだが」


「!」


それを聞き、私はそら見ろと言わんばかりにまた煽る。


「宇喜多様もこうおっしゃっています。疲れている所に奇襲などされれば敵はひとたまりもないでしょう」


「何を言う。こちらの兵力は敵の半分しかない」


そしてまた一蹴されてしまった。


「この娘の言う通りだ。疲労が溜まっているところを不意討ちすれば、倍の兵力など風の前の塵に同じだ」


今度は秀家様が言った。


「今、各地から兵を呼び戻しております。彼らの到着を待ってはいかがでしょう」


やはり三成様は頷かない。


「でもこの前、左近様が言ってたじゃないですか。「待っていたら敵も回復してしまいます」って」


なかなか首を縦に振ってくれないことをもどかしく思った私はすかさず出しゃばる。


「だからといって迂闊(うかつ)に行動に出てはならぬ」


その後も私と左近様と秀家様の3人がかりで夜襲をすすめたが、結局失敗に終わった。


三成様、あなたは一体…。
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