情炎の焔~危険な戦国軍師~
私は半蔵さんの胸を思い切りパンチした。


「くっ」


さすがの彼もこれには驚いたらしく、胸を押さえてうずくまっている。


その半蔵さんをまた突き飛ばして、私は一目散に部屋を飛び出した。


ここは賊のアジトなのだろう。


あちこちにやはりむさ苦しい男達が数人ずついるが、彼らに構っている暇はない。


「どいて!」


驚く賊達を突き飛ばし、半蔵さんから逃げる。


出口を見つけ、そこから脱出してまだ走る。


振り向く余裕などないが、背後に確かな気配を感じる。


「あっ!」


足に何かが絡まった。


そのせいで勢いよく転んでしまった。


どうやら半蔵さんの武器に付いている鎖のようだ。


「小娘の分際でなめた真似をしてくれる。もう逃げられぬぞ」


じりじりと迫って来るので後ずさるが、ついに木立に追い詰められてしまった。


暗闇の中、半蔵さんの目と鎖鎌がギラリと光る。


三成様。


私がいなくなってもどうか左近様の意見は聞き入れて下さい。


あなた達の勝利が私の願い。


だからどうかご無事で。


私は目をつぶった。


ヒュッ


鎌が風を切って振り下ろされる音がした。
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