情炎の焔~危険な戦国軍師~
「…」


しかし、いつまで経っても何も起きない。


私はおそるおそる目を開ける。


この後ろ姿は…!


「くう…」


半蔵さんの手は、いつのまにか現れた左近様によって動きを封じられていた。


「はあっ!」


そして半蔵さんはそのまま地面に叩きつけられた。


「バカな。私としたことが2度も貴様にやられるとは」


すると左近様が不敵に笑う。


「友衣さんに手を出す奴は俺が許しませんからね」


そう言いながら励ますように後ろ手で私の手を握ってくれた。


「さ、どうします?」


左近様の問いに半蔵さんは無言でハイキックを繰り出す。


(危ない!)


しかし左近様は突き出された足をつかみ、再び叩きつけた。


「そんなに高々とした蹴りは体勢が崩れやすく、隙も多いんですよ」


「くそ、この服部半蔵が負けるだと…」


「あんたは忍としては優秀かもしれない。しかし、冷酷非情な性格とお見受けした」


「だからなんだ」


「いかなる忍術も、人を思う気持ちには勝てないってことですよ」


「人を思う気持ち?」


「そうです」


「ふん」


半蔵さんは鼻で笑う。


「興がさめた」


そう言い残し、彼は風のように消えた。
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