情炎の焔~危険な戦国軍師~
第22戦 それぞれの思い
「島殿」
ある昼下がり、家臣の1人が左近様に話しかけてきた。
「三成様はいずこへ?」
「ああ、ご気分が優れないらしく、あの部屋でお休みになっている」
彼は襖を閉め切った部屋を指差していけしゃあしゃあと言う。
三成様が陣を放り出して佐和山城へ行ったことは私達を含めてほんの数名しか知らない。
もしそれが公になれば西軍の士気が下がるだろうし、家臣や他の将の三成様に対する信頼も揺らぐのではないか。
そう左近様に言ったら大いに同意してくれ、秘密にすることにしたのだ。
「そういうわけであるから、何か伝言があれば俺が殿に伝えよう」
「いや、ただご容態が気になって」
「快方には向かっているようだ。しかし、まだとても家臣達に顔向け出来る状態ではないとおっしゃっている」
「そうか」
左近様って演技上手いなあ。
堂々と振る舞っているから家臣もすっかり信じきっている。
「やれやれ」
家臣が去ってから左近様は盛大にため息をついた。
「殿の不在をごまかすのも一苦労ですな」
そう言って苦笑している。
「でも演技上手じゃないですか。アカデミー賞ものでしたよ」
何回目だろうか、ついまたうっかり横文字を使ってしまう私。
「あかでみいしょう?」
「あ、とにかくめちゃくちゃ上手ってことです」
そんなたわいのない会話をしてから、私は櫓(やぐら)に登り、遠方を見た。
ある昼下がり、家臣の1人が左近様に話しかけてきた。
「三成様はいずこへ?」
「ああ、ご気分が優れないらしく、あの部屋でお休みになっている」
彼は襖を閉め切った部屋を指差していけしゃあしゃあと言う。
三成様が陣を放り出して佐和山城へ行ったことは私達を含めてほんの数名しか知らない。
もしそれが公になれば西軍の士気が下がるだろうし、家臣や他の将の三成様に対する信頼も揺らぐのではないか。
そう左近様に言ったら大いに同意してくれ、秘密にすることにしたのだ。
「そういうわけであるから、何か伝言があれば俺が殿に伝えよう」
「いや、ただご容態が気になって」
「快方には向かっているようだ。しかし、まだとても家臣達に顔向け出来る状態ではないとおっしゃっている」
「そうか」
左近様って演技上手いなあ。
堂々と振る舞っているから家臣もすっかり信じきっている。
「やれやれ」
家臣が去ってから左近様は盛大にため息をついた。
「殿の不在をごまかすのも一苦労ですな」
そう言って苦笑している。
「でも演技上手じゃないですか。アカデミー賞ものでしたよ」
何回目だろうか、ついまたうっかり横文字を使ってしまう私。
「あかでみいしょう?」
「あ、とにかくめちゃくちゃ上手ってことです」
そんなたわいのない会話をしてから、私は櫓(やぐら)に登り、遠方を見た。