情炎の焔~危険な戦国軍師~
その時。


バキッ


誰かに殴られた半蔵さんが驚いた表情のまま倒れる。


そしてそのまま気絶してしまった。


「いつまでも俺の大事な女に触らないでもらおうか」


そこには腕や足にいくつも傷を作った左近様がいた。


「左近様!」


「あんたバカですよ」


「え?」


いきなりそう言われて拍子抜けしてしまう。


「そんなことされたって全然嬉しくない。罠にかかって死ぬことより、あんたを失うことの方が俺は悲しい」


「でも左近様は罠なんかで死んではいけないんです。もっともっと生きてなきゃダメなんです。何年後も何十年後も、絶対に」


むきになる私をなだめるように、優しく笑いながら頭を撫でてくれる左近様。


「俺はそのくらいで死にません。あんたをおいていけませんから」


「良かった。生きててくれて良かったです」


「そう言ってもらえるなら、必死に脱出してきた甲斐もあったってもんですかね」


照れ臭そうに彼は笑っている。


「左近様にはまた助けられちゃいましたね」


「言ったでしょう?友衣さんに手を出す奴は許さないって。それに、惚れた女1人守れなきゃ武士、いや、男じゃありませんからね」


「ほ、惚れた女?」


左近様の何十回目かのストレートすぎる物言いにいまだに慣れない私は赤面した。


「ええ」


当の本人はやっぱり相変わらず笑っていて、その笑顔で私を安心させてくれる。


「とりあえず半蔵が気付く前に早くここを出ましょう」


左近様は私の手を取って走り出す。


そのさりげない動作に、私は胸をときめかせていた。
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