情炎の焔~危険な戦国軍師~
「わかりました。失礼しました」


三成様は会うつもりがないと言うと、彼女は健気に頭を下げ、城を去っていった。


好きな人に会うためはるばるやって来たのに、こんなにもあっさり追い返されるなんて。


私だったらショックで打ちひしがれてしまうだろう。


部屋に戻った私はかわいそうな仕打ちだと三成様に言ったが、彼は複雑そうな顔を見せたきり黙ってしまった。


それを見てハッとする。


きっと三成様も会いたかったのだ。


しかし、潔癖な性格ゆえに城内の風紀を乱すのは許せないのだろう。


「ごめんなさい。出過ぎたことを」


私はしおらしく頭を下げる。


「いや、いい」


そのどこか寂しそうな顔が頭から離れないまま、私は部屋を出た。
< 170 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop