情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド三成-


「殿、よろしいのですか?」


友衣が去った後、部屋に控えていた左近が話しかけてきた。


「何がだ?」


「華嬢のことです」


「なんだ。お前も友衣と同じ意見か。どこまでも仲が良いことだな」


「殿」


咳払いをする左近を見て、ハッとする。


「いや、すまない」


「それより華嬢を追い返して良かったのですか?」


「構わぬ。それより家康はまだ来ないのか」


気持ちが逸(はや)る。


「まあまあ、そう神経質になってはいけません」


「神経質になどなっておらぬ」


少しむきになってオレが言うと、左近は深いため息をついた。


「殿はお疲れなのでしょう。たまには女に癒されるのもいいんじゃないですか」


「ならぬ。もし敵が攻めてきて、その時に女と褥にいたなどということになったらどうする。情けないではないか」


「ですから、神経質になってはいけません」


「だいたいお前には友衣がいるからそんなことが言えるのだ。あいつはもともと城内にいるから、女を招き入れたなどと騒がれなくていい。だが華は」


そこまで言って我にかえったオレは口をつぐむ。


「すまぬ。言い過ぎた」


「…いえ」


さすがの左近も驚いたらしく、返答までにやや間があった。


(家康を倒すまで女に気を取られていてはならぬのだ)


そんな考えが頭を巡るのに、心のどこかでは得体の知れない焦燥が渦巻いていた。
< 171 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop