情炎の焔~危険な戦国軍師~
第26戦 裏切りの予兆
ーサイド友衣ー


三成様は早朝になってから城に帰ってきた。


「お帰りなさい」


私は廊下で話しかける。


「お前、起きていたのか」


「いいえ、考え事をしていてちょっと眠れなかっただけです」


まさかテストが55点で単位がもらえず、ショックを受けた夢を見て飛び起きていただなんて言えない。


「ほう、考え事」


そんなことをして知恵熱でも出されたら困る。


などと、また嫌味を言われると思った。


しかし、実際は違った。


「何を考えていたか知らぬが、あまり思いつめるな。体を愛おしめ」


「えっ…?」


三成様はわずかながら微笑んでいるように見えた。


「まだ朝餉まで時間がある。今のうちに寝ておけ」


驚く私を置いて三成様はそう言って部屋へ入っていく。


その優しさになぜか、儚さのようなものを感じた。


あの微笑は何かを悟っているみたいだった。


まるで己の運命を知っているかのような…。


朝の光が降り注ぐ庭を見て呟く。


「もの悲し いと残酷な 運命を 変えられるのは 誰ともなしに」


明るい日差しとは正反対の不安な気持ちが私を覆い始めた。
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