情炎の焔~危険な戦国軍師~
しばらくして、三成様が戻ってきた。


「どうでしたか?」


待ちきれなくて、彼の顔を見るなり開口一番に聞いた。


「友衣の言った通りだった。広家殿は何を考えているかわからぬ」


苛立ったようなため息をつき、不機嫌さをあらわにする三成様。


「と、おっしゃいますと?」


今度は左近様が聞く。


「最初は秀元殿に聞いたのだが、伯父に聞いてくれと言うから広家殿に聞いてみたら、笑ったり曖昧な態度を取ったりではぐらかされた」


やっぱり怪しいな、と思った。


「おまけにその吉川隊が山頂に陣取っている。いざとなったら長曽我部、安国寺、長束隊が背後を突かれてしまうではないか」


いつになく三成様に焦りの色が見える。


しかし、十九万石の三成様にその陣取りをやめさせるほどの強い権力はない。


西軍の大将はあくまでも百万石を超える毛利家なのだ。


しかしながら三成様は大垣城の人々に色々指示しなければならない立場にある。


「オレはなんと無力だろう」


彼のその言葉に、私も左近様も表情を曇らせた。


慶長5年9月7日。


関ヶ原の戦いまであと8日。
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