情炎の焔~危険な戦国軍師~
「友衣」


「はい」


部屋を辞そうとすると、いきなり三成様が呼び止めてきた。


「これをやろう」


「これはお香ですか?」


渡された3つの器にはどれも独特な香りのする物体が入っている。


「そうだ。なぜか友人が香なぞを嗜(たしな)んでいてな。くれると言ったのだ。オレは使わぬからお前にやろう。余ったら誰かにくれてもいいぞ」


「ありがとうございます」


で、もらったのはいいんだけどどうしよう。


焚く道具持ってないしなあ。


そんなことを考えながらそっと1つの器に鼻を近付けると、品のある不思議な匂いがした。


妙にほんのり甘いのに優しく、官能的なその香りはなぜか左近様を思い出させた。


胸がざわざわと掻き乱される。


ぎゅうっと締め付けられるような切ない想いに支配され、私の足は自然と左近様の部屋に向いていた。
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