情炎の焔~危険な戦国軍師~
「左近様」
「おや、どうしたんです?」
突然訪れたにも関わらず、左近様は人の良い笑みを浮かべて聞いてくれる。
「これ、左近様が持っていて下さい」
私は頭を下げながらお香を突き出した。
「ほう、お香ですか。これは…麝香(じゃこう)か」
彼は興味深そうに私の差し出したお香を手に取って見、聞いている。
「他ならぬあんたからの贈り物となったら、受け取らないわけにはいきませんね。しかしどうして?」
「えっ、ああ」
この香りは左近様みたいだからです。
わあ、そんなこと恥ずかしくて言えないよ。
「ま、理由はどうあれありがたくもらっておきましょ」
目の前で私の恥じらいをも包み込んでしまうような寛大な微笑みが咲いた。
ああ。
このさりげない表情にさえドキドキしてしまう。
私、やっぱり心の底から左近様を…。
「友衣さん」
「は、はい」
いきなり名前を呼ばれ、慌てて居住まいを正す。
「ならば俺からはこれを」
左近様が差し出したのは、鞘に三つ柏-島家の家紋が刻まれた懐刀であった。
「護身用の短刀くらい、あんたも持ってるでしょうがね」
「それならどうして?」
「これを俺の代わりだと思って下さい」
「え?」
見ると、彼の頬はほんのり桜色に染まっている。
「たとえまた窮地に陥っても、友衣さんにはこの刀があります」
「左近様…」
「どんな時だって、あんたは1人じゃないんですから」
それを聞いてたちまち心拍数が増えていく。
「あ、ありがとうございます。では失礼しました」
きっとこれ以上とどまっていたらどうにかなってしまう。
うるさく跳ねる心臓を感じながら私は懐刀を受け取って胸に抱き、そそくさと部屋を辞した。
「おや、どうしたんです?」
突然訪れたにも関わらず、左近様は人の良い笑みを浮かべて聞いてくれる。
「これ、左近様が持っていて下さい」
私は頭を下げながらお香を突き出した。
「ほう、お香ですか。これは…麝香(じゃこう)か」
彼は興味深そうに私の差し出したお香を手に取って見、聞いている。
「他ならぬあんたからの贈り物となったら、受け取らないわけにはいきませんね。しかしどうして?」
「えっ、ああ」
この香りは左近様みたいだからです。
わあ、そんなこと恥ずかしくて言えないよ。
「ま、理由はどうあれありがたくもらっておきましょ」
目の前で私の恥じらいをも包み込んでしまうような寛大な微笑みが咲いた。
ああ。
このさりげない表情にさえドキドキしてしまう。
私、やっぱり心の底から左近様を…。
「友衣さん」
「は、はい」
いきなり名前を呼ばれ、慌てて居住まいを正す。
「ならば俺からはこれを」
左近様が差し出したのは、鞘に三つ柏-島家の家紋が刻まれた懐刀であった。
「護身用の短刀くらい、あんたも持ってるでしょうがね」
「それならどうして?」
「これを俺の代わりだと思って下さい」
「え?」
見ると、彼の頬はほんのり桜色に染まっている。
「たとえまた窮地に陥っても、友衣さんにはこの刀があります」
「左近様…」
「どんな時だって、あんたは1人じゃないんですから」
それを聞いてたちまち心拍数が増えていく。
「あ、ありがとうございます。では失礼しました」
きっとこれ以上とどまっていたらどうにかなってしまう。
うるさく跳ねる心臓を感じながら私は懐刀を受け取って胸に抱き、そそくさと部屋を辞した。