情炎の焔~危険な戦国軍師~
「平助さんに左近様!」


そう、謎の叫び声は平助さんが、プロポーズみたいなセリフは左近様が言っていたのだ。


「でやっ!」


平助さんが竹刀を振り下ろす。


「たとえ命に代えても守り抜いてみせる!」


左近様はそう言って自分の竹刀で受け止め、なぎ払う。


「…」


おかしな訓練の様子に、私はバカみたいに口を開けてポカンとしていた。


「あ、友衣」


私に気付いた平助さんがこちらを見る。


「2人とも何を叫んでるんですか?」


「最近、睨み合いが続いていてなかなか戦況に動きがないでしょう?だから気合いを入れようと思いましてね」


左近様が答えた。


「そうそう。それでどうやったら気合いが入るかって話をしてたんだけど、俺はとにかく叫ぶこと、左近様はかっこいいセリフを言うことに落ち着いたってわけ」


「はあ」


なんかよくわからないや。


「友衣さんも参加します?」


ニコニコしながら竹刀を渡そうとしてくる左近様。


「遠慮しておきます」


苦笑しながら私は踵(きびす)を返した。


「どわーっ!」


「この胸の思い、いまだ燃え尽きず!」


「だああっ!」


「この刀で未来を切り開く!」


「ふふっ」


部屋に戻っても聞こえてくる2人のやり取りがおかしくて、思わず吹き出してしまう。


しかし、しばらくして雨が降ってきたらしく、ザアーッという音がし、あの掛け声も聞こえなくなっていた。


そういえば三成様はどうしているだろう。


気になった私は部屋にお邪魔した。
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