情炎の焔~危険な戦国軍師~
第29戦 すれ違う愛情
ーサイド友衣ー


翌日。


「今一度、大坂に催促の文を出す」


三成様は唐突にそう言った。


確か大坂の毛利隊が来ないと戦力的に不安定なんだっけ。


だから私は口を挟まなかったが、左近様は違った。


「殿」


「なんだ?」


「もうあきらめた方がいいのでは」


「何?」


「来るか来ないかわからない毛利隊を待つよりも、今集まっている軍だけで戦うことを考えた方が得策かと」


「なぜだ。毛利隊は我ら西軍の要だぞ」


「いくら要でも現実を見て下さい」


説得する左近様を見てハッとする。


そっか。


戦力的に不安定でも策を講じれば、いくらでも勝てるチャンスはあるよね。


あの厳島の戦いだって陶晴賢(すえ はるかた)軍が2万だったのに対し、毛利元就軍はたった約4千の兵で打ち破ったっていうし。


よし。


「三成様」


私は桶狭間の戦いなど、知っているすべての勝利側の兵士数が少なかった戦いの例を挙げた。


戦力的に不安定でも勝機はある。


それをアピールするために、毛利隊にこだわらず、今出来る方法を考えた方がいいと気付かせるために。


そしてこの時代にいるはずのない私が働きかけることで、少しでも史実と違うことを起こさせられたら。


そう思っていた。
< 198 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop