情炎の焔~危険な戦国軍師~
「うーん…」


夜。


訓練を終えた私はまた私服姿になり、左近様の部屋で頭を抱えていた。


結局、三成様は私の意見を聞き入れなかった。


そして今は、文を書くと言って自室にこもっている。


どうしたらあの人の重い腰を上げさせることが出来るの?


もう何回考えてきただろう。


いっこうに良い案が浮かばない。


説得出来なかった目の前の左近様の顔も、心なしか沈んでいるように見える。


「三成様はこのまま家康殿の到着を待ち、大合戦を繰り広げるつもりなんでしょうか」


「きっとそうでしょう」


「だから私達の話も聞き入れようとしないんでしょうか」


これを本人に聞いても、つんけんとした態度を取られて教えてくれなかった。


「そうかもしれませんね。軍師なのに主に認められるような策も考えられないなんて」


彼の表情がますます沈んでいく。


「そんなことないですよ」


「俺は何のための軍師なんでしょうね」


「もう言わないで下さい」


私は思わず彼の肩に手をかけた。


そして訴えるように言う。


「軍師っていうのは主に認められる作戦じゃなくて、勝つための作戦を練るためにいるんじゃないんですか?」


「ええ、そうですね」


まだ寂しそうに笑っている。


「だったら」


「いくら素晴らしい権謀術数を考えても主が納得し、実行されなければ意味がありません」


そう言われて私は言葉に窮してしまった。


どうしたら彼を笑顔に出来るの?
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