情炎の焔~危険な戦国軍師~
そして夜。


私はまた三成様にお酌を頼まれていた。


「すまないな。手間をかけさせて」


いつもは勝ち気な三成様が珍しくしおらしい。


大戦を前にストレスがたまっているのかも。


もしくはやっぱり、自分の運命を悟って…?


「いいえ」


私は自分のそんな考えと三成様の言葉の両方を否定したい思いで首を横に振り、お酌をした。


「だが、不安でな」


素直に弱音を吐くのもやっぱり珍しい。


「よくわかります。大事な戦の前ですからね」


あえて多くを語りすぎず、聞き手に回る。


吉川隊のことも含めて、事態はしだいに悪くなってきている。


このままでは西軍の悲劇を回避出来ない。


自分には今、何が出来るだろう。


どうすれば歴史を変えられるだろう。


私は徳利の中のお酒を見つめながらそんなことを考えていた。


するとふいに三成様が言った。


「お前も飲むか?」
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