情炎の焔~危険な戦国軍師~
「ひどい。そんなことわざわざ言わなくてもいいじゃないですか」


涙目でそう訴えても華麗にスルーされる。


「お前はあいつのどこが好きなんだ?」


「え?そうですね。優しいところとか、大人の余裕を見せてくれるところとか」


左近様の長所を挙げながら、私は胸がじわじわと熱くなってきているのを感じていた。


それはお酒の匂いで酔ったせいだと無理に自分に言い聞かせる。


「ほう。まあ、確かにあいつはオレに対しても叔父貴のような物言いをするからな」


「叔父貴って誰ですか?」


「誰ということはない」


ああ、つまりねちっこい陰湿な言動を「小姑みたい」と言うのと同じかな。


「あ、三成様こそ華さんのどこに惚れたんですか?」


「そんなことを言わせるな」


三成様の顔が一瞬にして赤く染まる。


まったく正直で単純だな。


「いいじゃないですか。私だって左近様の好きなところ、言ったんですから」


そう言うと観念したように口が開かれた。


「そうだな。素直で愛らしいところだ。どこかの誰かさんとは違ってな」


あ、今チラッとこっちを見た!


「ひどっ!三成様の意地悪」


お酒が入っているせいか軽口を叩いてしまう。


「戯れだ。気にするな」


「気にするに決まってるじゃないですか」


「うるさい女だ」


「なんか言いました?」


「何でもない」


「ちゃんと聞こえてましたよ。うるさい女だって」


「ならば聞き返すな」


悪びれもせずそう言われる。


「ふーんだ。どうせ私はうるさくて素直じゃなくて愛らしくもありませんよー」


「すぐにすねるとは子供っぽいな。年のわりに大人っぽいあいつとはやっぱり大違いだ。どっちが年上かわからん」


「はいはい。私は永遠の17歳ですから」


「バカか」


「ほーお、今さら気付いたんですか?さんざんバカバカ言っておいて」


ダメだ、私完全に酔っ払ってる。


「付き合いきれんな」


三成様は呆れ顔でお猪口を傾けた。


それにしても、三成様を相手に恋バナを繰り広げるなんて意外な展開だなぁ。


なんだかテンションが上がって調子に乗った私はその後、我を忘れるほど飲みまくり、いつのまにか眠りの世界に入ってしまった。


まだたいして酔っていない三成様を置いて。
< 212 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop