情炎の焔~危険な戦国軍師~
疾風に乗って私はある場所を目指す。


30分ばかり走った頃、そこに着いた。


私と三成様が出会った場所だ。


実はここに来る前にゲームしていた時、ポケットにケータイを入れていたはずなのに、佐和山城に来た時には忽然となくなっていたのである。


今日は心がもやもやしているから仕事が出来る気がしないので探す気になったのだ。


2ヶ月も経っているから誰かに拾われた可能性もあると思いながら私はそこら辺の草をあさった。


木の根元もしっかり調べる。


しかし、どんなに必死に探しても見つからない。


「うーん、誰かに拾われたかな」


ぼそっと呟いて立ち上がった時、ふいに背後から殺気を感じた。


「曲者!」


そう叫んで懐から護身用の短刀を出そうとした時には遅かった。


背後から手を掴まれ、首筋にぴたりと鎖鎌が突き付けられる。


「ひゃっ」


「動くな」


ぞっとするくらい冷たい声だった。


そっと背後の敵を盗み見る。


黒い頭巾と忍者装束に加えて紫のスカーフ。


忍者のようだ。


「あなたは?」


「服部半蔵…」


忍は静かに笑った。


あの有名な服部半蔵さんが私を捕まえるとはどういうことだろう。


「私をどうする気?」


「貴様が探しているのはこれだろう?」


彼の手にあったのは私のケータイ。


「あ、返して」


「ならぬ。この中には徳川家の家紋の絵があった。調べてみると、貴様は三成の所にいるそうではないか。何かたくらんでいるのだろう」


なんでこの時代の人がケータイを使えるの?と思ったがはっとした。


待受画面が、月替わりで色々な武将(徳川家、織田家、伊達家、上杉家、武田家)の家紋が出てくるというものだったからだ。


待受画面なら操作出来なくても開いただけで見れる。


たまたま今月は徳川の家紋だったのだ。


「貴様には大坂まで来てもらう」


「どうして?」


「こんなわけのわからない箱に徳川家の家紋の絵を入れておくお前が敵対する三成側の人間だとわかった今、黙って見過ごせぬ。どういうことか説明してもらわねばならぬからな」


「嫌だ、離して!」


「あまり抵抗するなら、動けなくしてから連れ去っても良いのだぞ」


鎖鎌の切っ先がギラリと鈍く光った。


「嫌あ!」
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