情炎の焔~危険な戦国軍師~
「戦いは避けられない、か」


夜、仕事も修行も終えた私は布団の上に転がりながら1人で呟く。


左近様には生きて帰ろうと言った。


だけど三成様には戦を回避するように言った。


「私は一体どうしたいんだろう」


多分両方なんだ。


出来ることなら戦を避けたい。


だけれども、ここまで来た以上はやるしかないんだと心のどこかで思っている。


その2つの思いの間でぐらぐらと頼りなく揺れ動いているんだな。


いや、私が弱気ではダメ。


この世界で皆の運命を知っているのは私だけなんだから。


そんなことを考え、私は左近様からもらった護身用の懐刀を鞘から抜いた。


それはギラリと鋭い光を放っている。


戦に勝つ。


そのためには、否応なしに敵味方関係なく無数の人の命を踏みにじる必要がある。


死んでいく人達にも私のように大切な人、守りたい人がいるはずだ。


だから戦場に立つ以上は覚悟を決めなければならない。


私と重さの変わらない命を奪わなければならぬということを。


「ふう」


ため息をついて懐刀を鞘にしまう。


そして鞘に刻まれた島家の家紋を、夜が更けるまでぼんやりと眺めていた。
< 221 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop