情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド左近-


「すみません、左近様。友衣の行方をご存知ないですか!?」


自分の屋敷に戻る仕度をしていると、平助が慌ただしく駆け込んできた。


「友衣さんがどうかしたのか?」


「先程手合わせを頼まれたのですがその後、姿が見えなくて」


「何?」


「左近」


今度は殿が静かに入ってきた。


だが、どことなく様子がそわそわして落ち着かない。


「友衣がいなくなったのだが、疾風も消えていた」


「疾風も?」


「番の者に聞いたら、一刻ほど前に友衣が疾風に乗って出掛けていったという」


「行き先は?」


「言ってなかったそうだ」


「ただの買い物じゃないんですか?」


殿や平助よりむしろ自分に言い聞かせるように言う。


「いや、一文無しで出ていったらしい」


「どうして…。殿に怒鳴られたから、俺がさっき拒絶するように視線を逸らしたから出ていったとか?」


そんなバカな、と思った。


自分で言っておきながらぶんぶんと首を横に振る。


「出ていった?まさか」


殿は駆け出した。


「え、待って下さい」


俺も慌てて後を追った。
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