情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド左近-


家康の到着を知った兵士達は一様に動揺し、おののいている。


どの陣を見回ってもそうだった。


もし、殿が家康に優る人物と思われているならこうはならないだろう。


「家康ごときの首など、俺が取ってやる!」


武士たる者、そう意気込んでしかるべきだ。


しかし、そのような者はいない。


つまり、この味方達は殿より家康の方が優ると思っているということだ。


「まずいな」


なんとか味方の士気を上げねばならない。


俺は宇喜多秀家殿と共に、殿に奇襲の話をした。


「出撃しても構いませんか?敵の先峰の部隊くらい、俺達が蹴散らして来ます」


「良かろう」


殿はまだどこかうつろな顔のまま頷く。


それを聞いて俺や兵士達は身支度を整え、城を出た。


「いざ、参らん」


元和州牢人、島左近の軍略を見せてやる。
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