情炎の焔~危険な戦国軍師~
それから一刻ほど経った頃、私達は笹尾山という場所に布陣した。


小雨になったので篝火が焚かれ、ようやく視界が明るくなる。


「あの、三成様」


「心配するな」


三成様の体が心配だが彼は私を振り払い、1人でふらふらと各陣の見回りに行ってしまった。


その背中が、なんだかひどく悲しかった。


「…」


時間も、眠ることさえも忘れてぼんやり物思いにふけっていると、左近様がやって来た。


「左近様」


私は思わず彼の手を引く。


「友衣さん」


篝火に照らされた顔はひどく真剣だ。


「夜が明けたら戦いが始まるでしょう。もし俺が敵に討たれたら、たとえ俺を盾や踏み台にしてでも家康を討ち取って下さい」


「そんな。なんてこと言うんですか!」


「あんたも武士なんでしょう。それなら俺の意気、わかってくれますよね?」


「左近様…」


前はわからなかったけど、今なら少しわかる。


左近様はこの戦に全身全霊を捧げるつもりなんだ。


この乱世に生を受けた1人の男として、武士として。


だけどやっぱりつらい。


ただ彼にすがって悲しみをこらえる。


「友衣さん」


なだめるように抱き寄せられ、ふんわりと体が温かくなる。


この何よりも愛おしい温もりを感じることはもう出来ないの?


その時、三成様が戻って来た。
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