情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド友衣-


「ひっく、うう…」


陣中で、私は泣きながら、戸板に寝かされた左近様の傷口を布で押さえていた。


その布もあっという間に血の色に染まってしまう。


「嫌だ、嫌だ…」


もはやうわごとのようにそればかりを繰り返していた。


「友衣」


三成様が悲痛な面持ちで肩を叩いてくる。


その顔を見てハッと我にかえった。


「ああ…三成様、すみません。つい取り乱して」


「無理もあるまい」


左近様の顔はいつになく青白く、生気がない。


あの血色のいい顔と同じ顔とは思えないくらい。


それが私の心をさらに乱れさせていた。


「う…」


ふいに蚊の鳴くように小さなうめき声がした。


「左近様!?」


「左近!」


私と三成様は同時に呼びかける。


「ああ…」


彼はぼんやりと目を開いた。


そしてゆっくりと起き上がる。


「ダメ、無理したらいけません!」


私が必死にそう言うと、左近様は優しく笑いかける。


「ですが、このままここにいるわけにはいきませんから」


「友衣の言う通りだ。無理をするな。左近、オレはお前を失うわけにはいかないのだ」


「殿まで泣きそうな顔しないで下さいよ」


傷が痛むはずなのに、左近様は私達にいつもの笑顔を見せてくれる。


そして覚悟したように口を開いた。
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