情炎の焔~危険な戦国軍師~
「殿、後は俺がなんとかします」


「な…!まさかお前、オレを置いて1人で逝く気か!?」


三成様の顔がわずかに青ざめた。


「殿に出会えて良かったと思ってます。牢人の俺が命を賭けてでも守りたいと思える相手に巡り会えた。この左近、もう悔いはありません」


「左近…」


「今までありがとうございました。さよなら」


左近様は笑顔で死地へ駆け出していった。


「左近!!」


鋭く叫んだ後、三成様はがっくりと膝をつく。


私はそんな彼にそっと話しかけた。


「三成様、私もあなたに会えて良かったと思ってます。今まで平凡な女子大生でしかなかったのに、守りたい人達を見つけられたから」


「お前までそう言うのか」


「左近様が何のために無茶してるかわかりますか?三成様のためですよ」


「…」


「そして、私も」


私は腰に差した刀の柄をぎゅっと握った。


「友衣、まさかお前まで」


「我が人生に悔いなし」


そう言ってニコッと笑ってみせる。


「バカ言うな。お前まで死なせてたまるか!」


瞳をうるませながら叫ぶ三成様は彼らしくなかったが、今まで見た中で一番人間らしさに溢れていた。


「私をそれほど心配してくれるなら、もうそれだけで十分です」


「友衣」


「ひとつだけ言っておきますね」


「ん?」


「なるべく早く逃げて下さい」


「逃げる?」


「戦況が不利になったら、迷わず」


「バカ言え、軍を指揮する立場なのにそのようなことが出来るか」


「私に言えるのはそれしかないんです!」


三成様はしばらく渋っていたが、私の語気に押されたようでやがてこう言った。


「…わかった。かたじけない、友衣。お前の活躍、礼を言うぞ」


「三成様、どうかご無事で」


「ああ、お前もな」


私は左近様が駆けていった方へ急いだ。


「左近様!私もお供します!!」
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