情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あの、助けて頂きありがとうございました」


私が頭を下げると、お坊さんは穏やかに笑った。


お坊さんは法春さんという名前らしい。


ふと見ると15歳くらいの僧が廊下を掃除している。


「彼は?」


「ああ、あいつは小助。彼はかわいそうなことに幼い頃、1人であてもなくさまよっていたのです」


「そうですか」


「それにしても、あなたは女子の身でありながら甲冑を着て戦場に倒れておられた」


私は頷く。


「まるであの方に寄り添うように」


あの方、とは左近様のことだろう。


「一体どういった…」


そこまで言って法春さんはハッとした顔になる。


「申し訳ありません。立ち入ったことをお聞きしてしまいました」


「いいえ。ただ私は主とあの人を守りたかったんです。でも、何ひとつ守れませんでした」


それ以上は胸が詰まって言えなかった。


(三成様、左近様…)


法春さんもまた何かを悟ったらしく、それ以上は聞こうとしない。


そして


「傷が癒えるまでここにいるがいいでしょう」


と、言ってくれた。


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


私がそう言って退出しようとしたその時、法春さんが口を開いた。
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