情炎の焔~危険な戦国軍師~
庵の前まで来ると、ちょうど住人が入口から出て来た。


「まあ、そこのあなた。一体どうしたの?」


雰囲気のいい、優しそうな30代くらいの尼さんである。


「実は食べ物がなくて…」


「まあ、それはお気の毒に。良かったら上がりなさい」


「ありがとうございます」


丁寧に頭を下げてから、私は中に入れてもらうことにした。


「馬は裏に」


そう言われて裏に行くと、なんと厩がある。


お寺にあるのも不思議だったけど、庵にあるのも不思議だ。


中には目つきの凛々しい馬が1頭だけいた。


「大きくてキリッとした目かあ。なんか左近様みたいな目だなぁ…」


って、何考えてるんだろう。


「お馬さん、お邪魔します。君達、ケンカしないでね」


法春さんに借りた馬を繋げ、庵にお邪魔する。


尼さん(睡蓮さんという名前らしい)はお粥を作ってくれた。


それをごちそうになりながら、しばらくたわいのない話をしていたが、やがてこう聞かれた。


「あなた、1人で旅をしているの?」


「いいえ、人を探しているんです」


「人って?」


そう問われ、しばらく迷ったが私はおそるおそる聞いてみた。


「あの、最近、石田三成という人を見ませんでしたか?」


すると睡蓮さんの表情が変わった。
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