情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド左近-
「っく…」
半蔵の腕から血が滴り落ちる。
カシャン。
鎖鎌も落ちた。
その隙に彼女は半蔵から逃れ、殿の元に駆け寄る。
「なぜ…?」
半蔵が殿や彼女と真逆の方、つまり俺を見た。
あえて姿を見せないようにし、殺気を消してこっそり半蔵達の背後に回って正解だった。
「悪いが背後を取らせてもらった。このお嬢さんを連れて行かせるわけにはいかないんでね」
「バカな。この私がそんな不覚な…」
「さて、どうする。3対1では勝ち目がないだろう?」
殿が半蔵に手元の刀よりも鋭い視線を向ける。
「仕方ない。ここは引く」
そう言って半蔵は真上に飛び上がったと思うと、もう姿を消していた。
「三成様、左近様。助けて頂きありがとうございました」
彼女は丁寧に頭を下げたが、まだ声が震えている。
「ふん。バカはどこまでも手間をかけさせるのだな」
殿は相も変わらず憎まれ口を叩くが、安堵の色がその端正な横顔に表れていた。
「あんたが無事で良かったです」
俺が言うと彼女は俯いてしまう。
まだ昨日のことで避けているのかと思ったが、違った。
小さな肩が小刻みに揺れている。
まさかと思って彼女と視線を合わせようと少し屈むと、顔を横に向けてしまった。
「見ちゃ嫌です」
涙声になっている。
「怖かったんですね」
そう優しく言うと、彼女の緊張の糸が切れたらしい。
大きな瞳から透明な雫がぽたぽた落ちてきた。
なだめるように、俺は正面から小さな背中に右手を伸ばしてぽんぽんと叩いてやる。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
まるでうわごとのようにごめんなさいを繰り返しながら泣く彼女。
「もう俺達がいるから大丈夫ですよ。だから心配しないで」
俺はもう片方の手で頭を撫でた。
彼女が泣き止むまでずっとそうしていた。
「っく…」
半蔵の腕から血が滴り落ちる。
カシャン。
鎖鎌も落ちた。
その隙に彼女は半蔵から逃れ、殿の元に駆け寄る。
「なぜ…?」
半蔵が殿や彼女と真逆の方、つまり俺を見た。
あえて姿を見せないようにし、殺気を消してこっそり半蔵達の背後に回って正解だった。
「悪いが背後を取らせてもらった。このお嬢さんを連れて行かせるわけにはいかないんでね」
「バカな。この私がそんな不覚な…」
「さて、どうする。3対1では勝ち目がないだろう?」
殿が半蔵に手元の刀よりも鋭い視線を向ける。
「仕方ない。ここは引く」
そう言って半蔵は真上に飛び上がったと思うと、もう姿を消していた。
「三成様、左近様。助けて頂きありがとうございました」
彼女は丁寧に頭を下げたが、まだ声が震えている。
「ふん。バカはどこまでも手間をかけさせるのだな」
殿は相も変わらず憎まれ口を叩くが、安堵の色がその端正な横顔に表れていた。
「あんたが無事で良かったです」
俺が言うと彼女は俯いてしまう。
まだ昨日のことで避けているのかと思ったが、違った。
小さな肩が小刻みに揺れている。
まさかと思って彼女と視線を合わせようと少し屈むと、顔を横に向けてしまった。
「見ちゃ嫌です」
涙声になっている。
「怖かったんですね」
そう優しく言うと、彼女の緊張の糸が切れたらしい。
大きな瞳から透明な雫がぽたぽた落ちてきた。
なだめるように、俺は正面から小さな背中に右手を伸ばしてぽんぽんと叩いてやる。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
まるでうわごとのようにごめんなさいを繰り返しながら泣く彼女。
「もう俺達がいるから大丈夫ですよ。だから心配しないで」
俺はもう片方の手で頭を撫でた。
彼女が泣き止むまでずっとそうしていた。