情炎の焔~危険な戦国軍師~
「ひょっとして何か心当たりが?」
私はすがるように聞くが、期待通りの返事ではなかった。
「名前は聞いているけど、見てはいないわね」
「そうですか」
声のトーンが落ちているのが自分でもわかる。
「でも懐かしい名前だわ」
「懐かしい、ですか?」
「数年前に訪ねて来た昔の男が、その人に仕えたって言ってたの」
「昔の男?」
「そう。彼は女の子を口説いてばっかりの人でね。武士としては優れているのに」
「そうなんですか」
「それでも、わたしはあの人を憎めなかった。むしろあの人の放つ不思議な雰囲気に惹かれ、好きになってしまった」
「…」
私は聞き手にまわり、黙って頷く。
「あの人にとってはわたしは数いる女の1人にしかすぎなかったと思う。でも、それでもあの人が笑っているだけでわたしは幸せだった」
健気すぎる睡蓮さんに、私は胸を打たれる。
私なんて、好きな人が黄色い歓声を浴びていただけで穏やかじゃない気持ちになったのに。
しかし、次の一言でその思いは吹き飛んでしまった。
「彼の名前は島左近っていうの」
「えっ!」
私はすがるように聞くが、期待通りの返事ではなかった。
「名前は聞いているけど、見てはいないわね」
「そうですか」
声のトーンが落ちているのが自分でもわかる。
「でも懐かしい名前だわ」
「懐かしい、ですか?」
「数年前に訪ねて来た昔の男が、その人に仕えたって言ってたの」
「昔の男?」
「そう。彼は女の子を口説いてばっかりの人でね。武士としては優れているのに」
「そうなんですか」
「それでも、わたしはあの人を憎めなかった。むしろあの人の放つ不思議な雰囲気に惹かれ、好きになってしまった」
「…」
私は聞き手にまわり、黙って頷く。
「あの人にとってはわたしは数いる女の1人にしかすぎなかったと思う。でも、それでもあの人が笑っているだけでわたしは幸せだった」
健気すぎる睡蓮さんに、私は胸を打たれる。
私なんて、好きな人が黄色い歓声を浴びていただけで穏やかじゃない気持ちになったのに。
しかし、次の一言でその思いは吹き飛んでしまった。
「彼の名前は島左近っていうの」
「えっ!」