情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あの、あなたは?それに、なぜ三成様を?」


私は馬から降り、突然話しかけてきた農民風の男性に問う。


「ただのしがない農民です。実は私、数日前に三成殿を匿いまして」


「そうなんですか!?」


「これは誰にも口外しないで下さいね」


「え?はい」


「三成殿を村ぐるみで捕らえたらその村は年貢を永久に免ずるが、匿った場合は村ごと処罰の対象にする、というお触れが出ているのです」


「そんな…」


それでは村民が血眼で三成様をさがしてしまうではないか。


「あの、あなたはなぜ三成様を匿おうと思ったんですか?」


嬉しいけど、なぜそこまで出来るのだろう。


「私は昔、図らずも戦に巻き込まれた時に命を助けられました。あの方はもう覚えていらっしゃらないでしょうが、私はどうしてもその恩に報いたかったのです」


(三成様…)


あの人はいつも冷たく振る舞うけど、本当は情に厚い。


それを今、再確認した気がした。


「三成殿は佐和山城に向かって行かれました」


「わかりました。ありがとうございました」


私は再び馬に乗って佐和山城に向かった。


「三成様ーっ」


声の限り叫びながら。
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