情炎の焔~危険な戦国軍師~
佐和山城の周辺、いや、正確には佐和山城があった辺りの場所と言うべきか。


わずかに石垣があるだけで、記憶の中のあの城がまるで幻のように、跡形もなくなっていた。


そしてそこには#のような形をした家紋が染められた複数の旗が翻っていたのだ。


細平井桁の家紋、確かあれは…。


「徳川家の家臣、井伊家の家紋だ…」


その声には明らかに力がなかった。


「あ、ああ…」


佐和山城は敵の手によって陥落してしまったんだ。


あの城は皆と大切な時間を過ごした場所。


そして、三成様にとって最後の砦であったはずの場所。


じゃあ、もう彼は敵につかまってしまったの?


「…間に合わなかった」


日が沈んで闇が広がるように、不安がどんどん私の心を蝕んでいく。


「三成様、三成様!」


私は半狂乱になって叫びながらわけもわからず駆け出そうとする。


その時、ふいに背後からガシッと手首をつかまれた。
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