情炎の焔~危険な戦国軍師~
「まったく人騒がせな女だな」


城に着いて用意させた布団に泣き疲れた友衣さんを寝かすと、殿はまたぼやいた。


「またそんなこと言って。殿ったら本当に素直じゃないですね」


「とりあえず、こいつが起きたら知らせろ」


ばつが悪そうにそれだけ言って出ていった。


俺は枕元に座って彼女の寝顔を眺める。


長いまつげをそっと指先で撫でても彼女の規則正しい寝息は乱れない。


普通の女だ、と思う。


だが、胸の奥に何か切ないような不思議な気持ちがくすぶっている。


「そんなわけ、ないよな」


布団からはみ出している細く白い手をそっと中に入れてやりながら、そう小さく呟く。


誑しの左近に限ってそんなはずない。
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