情炎の焔~危険な戦国軍師~
私が近付くと左近様にじれったそうに抱き寄せられる。


「友衣さん」


「はい」


「許して下さい。戦に巻き込んであんたにまで怪我をさせてしまったこと。そして、生きて帰ると言ったのに死ぬのを覚悟して戦に臨んだことを。俺は武士である自分を捨てられなかった」


少し苦しげな声が耳元で聞こえる。


なだめるように、私は微笑んで言った。


「もういいんです」


「ですが」


「左近様、前に言ってくれたじゃないですか。あんたが無事ならそれだけでいいって。私だって同じ気持ちです」


「優しすぎますよ、友衣さん。俺なんかよりずっと」


大垣城にいた頃、佐和山城へ行ってしまった三成様を追う途中、賊や半蔵さんに襲われたところを左近様に助けてもらった時に自分が言ったことを思い出す。


「でも本心なんだから仕方ないでしょう」


私はその時左近様に言われたことをそっくりそのままお返しした。


「やっぱりだ」


「何がですか?」


「さすが俺の惚れた女だ」


「えっ」


「俺が認めたんです。自信持っていいですよ?」


「もう、何言ってるんですか、左近様ってば。恥ずかしいじゃないですか」


高鳴る胸の鼓動が左近様に聞かれてはいやしないかと心配したその時、背後から視線を感じた。


振り向くと、小助くんが興味深そうに私達を見ていた。
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